[守成ということ]
市町村合併で今は四国中央市と称するようになった旧川之江市の山あいのこの辺りは昔は「金田」と呼ばれる天領であった。天領ということは、よい米が穫れるということである。水はもちろん石鎚山系の伏流水である。『梅錦山川』は「菜種の油屋」であった庄屋の山川家が明治5年に酒蔵業に転身したものである。
その山川家により150年にわたり隆盛を極め、愛媛を代表する巨大蔵となった梅錦も、時代の変遷の中、山川本家の後継ぎの血筋がついに絶えることとなり、灘の大手の白鶴酒造に経営を譲ることになった。今では森安営業統括部長と醸造部松井杜氏の二人が経営と製造の責任者として蔵を任されている。といってもお二人とも当地で生まれ当地で育って当蔵を守り育てた生粋の梅錦マン。「今までの梅錦の伝統を守ってくれ」との親会社の理解の元、より高品質の酒造りに精力を傾けている。
松井杜氏は川之江出身。実家は地元の食堂で、生まれ育ちのその流れか大学の専攻は食品学科、食品の研究開発の前職から縁あって梅錦に入社。全国的に有名だった先代の山根杜氏から但馬杜氏の技術を25年に渡って叩き込まれてきた。いわば科学できる杜氏である。うま口かつ甘口の梅錦テイストをより磨いて飲み飽きないキレのある酒を目指すという。趣味はなんと休みの日のお菓子造り!「美味しいものを作ってお人に喜んで食べてもらうのがとても嬉しい」という食べ物愛に満ち溢れている。
対する森安部長は隣の伊予三島出身。社歴では松井杜氏の少し先輩にあたる。営業部門としてお客様からのご意見を製造部門に伝えながら、蔵としてより高品質のものづくりができるように統括する仕事でもある。趣味は舟釣り。ちなみに四国の酒蔵の幹部の方々には川や海に釣りが趣味という人が驚くほど多い。なるほど魚とのやりとりは自然相手の酒造りや営業にもつうじるものがあるのだろう。
この二人の下、四国の川之江の山中で梅錦はますます元気である。
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「本社屋から見る川之江金田の風景。昔ながらの山間の町である。」
本社屋から見る川之江金田の風景。昔ながらの山間の町である。
「本社屋正面」
本社屋正面
「併設する本店玄関。」
併設する本店玄関。
「松井杜氏は但馬杜氏の流儀を組む流れである」
松井杜氏は但馬杜氏の流儀を組む流れである
「森安部長(右)と松井杜氏。お二人とも当地で生まれ育ったいわば先輩後輩。」
森安部長(右)と松井杜氏。お二人とも当地で生まれ育ったいわば先輩後輩。
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