[高知美人局プロジェクト]
高知市から南へ下ると、浦戸湾の入口に近い所に長浜という集落がある。ここはお遍路さんの渡し舟の発着場でもある。昔からこの地区は四国霊場33番札所でもあり、同時に長宗我部元親の菩提寺でもあった「雪渓寺」の門前町として栄えていた。よって酒蔵も大いに繁盛していたであろう。『酔鯨酒造』はこの町の一角にある。この辺りは海岸沿いなので近年は地盤が弱まり、現在は仕込み水は高知市鏡川上流の工石山より運んでいる。 伝統的な土佐の酒に「新しい息吹を吹き込みたい」と熱い志を持つこの蔵が一番重要視するのは、「人材」とその人材の「向上心」。 蔵人の殆どは高知県以外から集まっている若者。でも、失礼ながらこんな四国の田舎にどうやって若くて優秀な人材を集められるのかというと、その手口?がいかにも高知らしい。まず、地元の高知大学は全国一県外出身者の比率が高い国立大学。ここの優秀な学生に狙いをつける。「まずは酔わせてその勢いで地元の女の子と一緒にさせて、こちらで就職せざるを得なくする。」 いやいや、これはいわゆる『キャッチバー』とか『美人局(つつもたせ)』とかというやつなんじゃないんでしょうか(笑)。 とにかく、釣られた若者は、『酔鯨』で仕事をし、当地で子を生み育て高知県のGDPの向上に貢献しているとのこと。「地域格差だ」「人材流出だ」と苦労している地方行政の皆様、是非ここ『酔鯨酒造』をお手本として各県で『美人局』を計画なさってはいかがでしょう(笑)。 筆頭杜氏たる醸造課長の明神さんは47歳、やはりこの人も熊本県の農家の出身。宮崎大学で農業科学を専攻し一心不乱に学業に打ち込んでいたところを、同じ研究室に出入りしていた獣医学科の現奥方様(高知市出身)に見初められ、あんなことやこんなことがいろいろあって(笑)、結局、高知に拉致されて酔鯨酒造で働くことになった。いわゆる気の毒な『被害者の会』の一人である(笑)。 高知市内で獣医をされている奥様からはもはや逃げられない(本人談)と観念したようで(笑)、現在は、似たような境遇の、30〜40歳代の若手蔵人のリーダーとして酒造りに邁進している。理想は「香りが邪魔をしないどんどん呑めて、なおかつ世界中の料理に合わせられる土佐の酒」と熱く語る。ちなみに長浜蔵では手狭になり、ここより西方20Kの仁淀川水系の土佐市に新造した土佐蔵が稼働開始。明神さんも早晩そちらに移る予定とのことである。仕事はともかくプライベートに関しては、これからのこともすべて奥様の御意向次第という明神課長。まさに高知県は酒も風土も 一度 堕ちたら身も心も虜にされてもう逃げられない『虎の穴』である(笑)。
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「古い街並みにある長浜蔵の正面」
古い街並みにある長浜蔵の正面
「製造部醸造課長つまり筆頭杜氏である明神さん この人も熊本出身」
製造部醸造課長つまり筆頭杜氏である明神さん この人も熊本出身
「丁度、蔵人さんによる搾りの試飲中」
丁度、蔵人さんによる搾りの試飲中
「釣られた魚? いえいえ優秀な『酔鯨』製造スタッフです」
釣られた魚? いえいえ優秀な『酔鯨』製造スタッフです
「新設の土佐蔵。もう巨大な工場である。」
新設の土佐蔵。もう巨大な工場である。
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