[四国の中心]
池田町の白地地区には、かつて長宗我部元親が四国統一の拠点としていた『白地城』があった。この地区は徳島県(当時の阿波国)、香川県(当時の讃岐国)、愛媛県(当時の伊予国)の3県の県境となる地域で、30k程南がもう高知県(当時の土佐国)という四国の要の地区である。今でこそ『四国中央市』の名前は県境を越えた愛媛県の旧川之江市に取られてしまったが、歴史的にはこちらの方が正統である・・・というのはもっぱら池田町民だけの主張するところである。 矢川酒造は、この白地地区の井ノ久保集落で明治29年から続く酒蔵である。代々、矢川家の経営で減当主の矢川文紀さんで7代目となる。子供の頃に家業を継ぐ話はなかったが、なんとなく広島の大学で発酵関係を専門に学ぶことになり、その流れで京都伏見の月桂冠研究所(民間では最大の日本酒研究施設)に就職。28歳で先代である父親に呼び戻された後、10年後にその先代が急逝し、苦労しながら酒蔵を引き継いだ。日本酒業界では世界に売り出す動きもあるが、自分の蔵では地元の人がずっと飲み続けてくれる酒を造りたいと朴訥に話してくれた。矢川さん自身の趣味は映画観賞。それも「映画館での」という注釈つきのガチである。昔は池田にも『春日座』なる映画館があったが今はなくなり、山を越えて40kも離れた香川県の映画館へ通っているということ。といっても都会と違ってすべての映画が上映されている訳ではないので、こちらで封切られていない映画はDVDで片っ端から購入しているが、仕事で忙しくてまだ見ていない所蔵DVDが貯まる一方、山をなしているらしい。 ちなみに池田はうだつの町でもある。「うだつ」とは昔の商家の白壁を区切っていたいわゆる防火壁。ここから「うだつをあげる」という言葉が「財をなす・成功する」として用いられるようになった。 「うだつの町並み」で売りだしているのはご存じ美馬市の脇町であるが、実は徳島県には吉野川に沿う伊予街道沿いに4つの「うだつの町」が残っているようである。まずは徳島市、ここは主に藍の商売でうだつを上げた。次が美馬市の脇町と隣の貞光町。ここは藍の他に蚕糸の産業が隆盛でもあったらしい。そして一番の上(かみ)にあるのがタバコの町・池田。現在、社会的にバッシングされているタバコにかわって、これからは酒蔵のうだつをあげて欲しい。
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「蔵の前を流れる『馬路川』。阿波、讃岐、伊予の国境から流れ出て吉野川に注いでいる。」
蔵の前を流れる『馬路川』。阿波、讃岐、伊予の国境から流れ出て吉野川に注いでいる。
「蔵の正面。前面の道は旧遍路道である。」
蔵の正面。前面の道は旧遍路道である。
「うだつのあがる旧家である。」
うだつのあがる旧家である。
「当主の矢川さん。お嫁さん募集中。」
当主の矢川さん。お嫁さん募集中。
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