『愛南に生きる』
ここ『城辺』は平成の大合併で周辺の3町1村と統合し『愛南町』となった、今でも『五箇町村(ごかちょうそん)』という呼び方が残る地域である。この旧の五つの行政区は寺や神社によって地域が異なる地域であったというもので、元々、互いに行き来は親密だったらしい。南予地区の中でももっとも南に位置している関係で、文化的には宿毛等の土佐に近い部分があり、酒蔵さん同士も松山よりも高知との交流(ただの飲み会だけど 笑)が深い様だ。 町は米、みかん(最近は『愛南ゴールド』が有名)等の農業で有名。けれども何と言っても最大の産業は漁業である。あまり知られていないことであるが、鰹の水揚げの日本一は高知ではなく実はここ愛南である。内緒だが季節には高知から水産業者がたたきの原料を買い付けに来るらしい(笑)。でも高知とは隣町、どうせおんなじ漁場なので、愛南の人は小さいことは言わないのである。土地柄は愛媛県のみならずおそらく四国の中では一番穏やかで優しい。自分本位の人が少なく、どこぞの人(笑)のような何かにつけての自己主張はしない。それは決して内気なのではない。愛南のいろいろな人と話をしていると「人間好きな人」「相手の気持ちがわかる人」なのだとつくづく思う。 そんな愛南で文久3年から酒造りをしている『小西酒造』は現当主の小西康之さんで4代目になる。愛南の昔の話を伺うとと、それはそれは栄えた町であったらしい。日本の地方産業が今よりももっと繁栄していた時代に、この地区の酒蔵の最大のお客さんは会社や飲食店ではなく「漁村」。鰹漁の網元の元気だったころは、町全体がそれはそれは浴びる様に飲んでいたらしい。ただ遠洋漁業や養殖漁業に押されて運送の不便なこの地域は市場から取り残されていったようだ。漁村の後継ぎもいなくなり人口が減るにつれて町にとどまる若者も自然に減っていった。今ではたんと酒を飲める若い人がいなくなってしまったと嘆かれる。 そんなこの町をずっと見守ってきたもののひとつが、この蔵の白壁である。創業時の姿をずっと保ってきた壁は、程良い経年の風情があり町の象徴のひとつである。
小西さん自身は御歳なので在蔵している時間も不定期である。代行して城辺の町内、愛南警察所の前の酒屋さん『菊池マート』さんでスタンプを押してくれるように手配してくれているので、その際には礼儀にジュースの1本でも買うこと。小西酒造『誠心』のお酒ならなお良いかもわからない。(笑)
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「宿毛からの国道がクランク状に間がっているところから城辺の旧市街への入口に位置する」
宿毛からの国道がクランク状に間がっているところから城辺の旧市街への入口に位置する
「山が海に迫る地形なので町並みも斜めになっている」
山が海に迫る地形なので町並みも斜めになっている
「いかにも酒蔵らしい酒蔵である」
いかにも酒蔵らしい酒蔵である
「10年以上も城辺の町を見守り続けてきた酒蔵間白壁」
10年以上も城辺の町を見守り続けてきた酒蔵間白壁
「小西当主は77歳。まだまだお元気である。」
小西当主は77歳。まだまだお元気である。
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